目的と経過
ALP酵素補充薬アスホターゼアルファ(商品名ストレンジック®)が使用可能となり、低ホスファターゼ症(hypophosphatasia; HPP)を取り巻く診療環境は大きく変化しました。そこで私たちは、HPP患者の診療にあたる医師や歯科医師に対してHPPの標準的医療を示し、臨床決断を支援するための診療ガイドラインの作成を行い、初版を2019年に日本小児内分泌学会ウェブサイト上で公開しました。
HPP診療ガイドライン初版の公開から数年が経過し、疾患認知度が向上したことに伴い、本疾患の診療に関するエビデンスが蓄積されつつある一方、⻑期的な合併症や管理、軽症例に対する酵素補充療法の有効性、骨密度低下を呈する成人患者に対する骨粗鬆症治療薬の使用の可否など、新たな課題も見えてきました。そこで、このたび、新たなクリニカルクエスチョン (Clinical Question: CQ) を追加し、診療ガイドラインの改訂を行いました。改訂作業は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究」班(https://skeletaldysplasia.jp/)と連携して進めました。HPPにおける症状や合併症は多系統に渡り、本疾患の管理においては多診療科の連携が必須であるため、さまざまな専門性を有する21名の委員から構成される改訂委員会を組織し、関連する10学会のご協力を得ました。作成した「低ホスファターゼ症診療ガイドライン2025改訂版」においては、初版で扱った21のCQに加えて、軽症病型に対する酵素補充療法、多診療科連携、成人症例に対する骨粗鬆症治療薬の投与、移行期医療の進め方などに関し、新たに34のCQを追加しました。HPPは希少疾患であり、また、重症例については酵素補充療法が行われなければ生命予後が不良であるため、収集された論文は横断研究や症例報告がほとんどでした。エビデンスが不充分な場合にも、HPP診療上において重要なCQに関しては、コンセンサスレベルの推奨を示しました。エビデンスがなく現時点では推奨を示すことができないCQについても、今後の研究につなげることを目的として掲載しました。「低ホスファターゼ症診療ガイドライン2025改訂版」は、日本内分泌学会からJ-STAGE上に公開されています。
解説を含めたガイドライン全文については、以下のサイトをご参照ください。
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HPP診療ガイドライン2025改訂版 推奨一覧
【推奨】HPPは発症年齢や重症度に幅があり、6病型に分類することを推奨する。年齢により異なる症状が存在し、周産期重症型のほぼ全例と乳児型の約半数は治療が行われなければ生命予後が不良であるのに対し、他の病型の生命予後は良好である。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPPは臨床症状、放射線学的所見および生化学検査所見から診断することが推奨される。血清アルカリホスファターゼ (ALP) 活性値の低下は重要な所見であるが、年齢や性別に応じた基準値と比較する必要がある。確定診断のためにはALPL遺伝子検査を行うことが推奨される。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPPの早期診断のために、幼児に対する定期的な歯科検診を実施することを推奨する。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】永久歯の早期脱落や高度歯列不正を示した成人においては、HPPを鑑別診断に含めることを提案する。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.5 (7–9)
【推奨】HPP患者においては、骨折や骨変形に加え、周産期から乳児期には呼吸不全、けいれん、頭蓋縫合早期癒合症、高カルシウム血症/高カルシウム尿症など、小児期には乳歯早期脱落や筋力低下、低身長、歩容異常、運動発達遅延など、成人期には偽骨折や筋骨格痛、ピロリン酸カルシウム結晶沈着症など、年齢に応じて様々な合併症が認められ、多診療科・多職種の連携によりこれらを評価することを推奨する。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPPの運動機能の評価のために、運動発達、運動機能、運動機能障害、筋力、筋疲労の評価(解説の表)のうち、患者の年齢や運動機能、治療のモニタリング、施設の状況などを踏まえて実施可能な検査を1年1回程度、定期的に行うことを提案する。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPPの精神発達の評価のために、乳幼児(生後16日〜42か月15日)においてBayley Scales of Infant and Toddler Development, Third Edition (BSID-III) を使用することを提案する。なお、精神発達遅滞が疑われる患者に対して上記の検査が実施困難な場合、一般的な発達評価(新版K式発達検査、WISC、WAISなど)を経時的に (治療のモニタリングとして) 行うことが望ましい。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPPの神経機能評価の方法については、現時点ではエビデンスがない。神経学的異常が認められないかを明らかにするために神経学的診察を行う。神経機能評価方法の開発と今後の症例の蓄積と解析が必要である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPPの痛みの評価のために実施可能な範囲で、解説の表に示す方法を使用することを提案する。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPP患者に対する骨単純X線検査においては、年齢や重症度により多彩な所見を呈する。周産期〜乳児期にはさまざまな程度の骨石灰化障害、骨幹端舌様低石灰化領域、骨変形、腓骨の骨棘などを、小児期にはくる病様骨変化や頭蓋内圧亢進による銅箔状頭蓋などを、成人期には骨折、治癒不良な中足骨骨折、偽骨折、非定型大腿骨骨折などを認め、これらの所見がみられた際にはHPPを念頭におくことを推奨する。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】骨密度測定はHPPの診断における有用性には乏しいことから、骨密度が低下していないことを理由にHPPを除外しないことを提案する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPP患者においては、血清ALP活性値が年齢や性別に応じた基準値に比較して低下を示す。尿中ホスホエタノールアミン (PEA) 排泄や血清/血漿ピリドキサール5'リン酸 (PLP) 値が増加するが、血清/血漿PLPの測定は保険適用になっていない。また、高カルシウム血症や高カルシウム尿症を示す場合がある。血清ALP値はさまざまな病態や薬剤投与により低下するため、ALPの測定は複数回行い、低下をきたす他の要因を除外することを推奨する。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】成人骨粗鬆症患者において血清ALP値が基準値下限以下を示す理由はHPPに限定されないが、脆弱性骨折を有する患者では、原発性骨粗鬆症でしばしば用いられるビスホスホネート薬や活性型ビタミンD3薬がHPP患者に対しては好ましくない影響を与える可能性がある。適切な治療方針の決定のため、血清ALP値が基準値下限以下を示した成人骨粗鬆症患者で、他に明らかにALP値が低値となる条件がない場合においてはHPPを鑑別することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:条件付き推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】胎児超音波検査による早期診断はHPPの早期治療・予後改善につながると考えられ、実施することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】胎児CT検査はHPPの早期診断や予後評価において、胎児の骨の骨化程度や構造異常の評価に有用な可能性があるが、全ての症例において第一選択であるとは言えない。超音波検査が妊娠中の胎児の診断方法としては一般的であり、被曝リスクを伴うCT検査は、超音波検査で十分に評価が難しい場合やさらに詳細な骨評価が必要な症例を除き必要なく、使用を制限することを提案する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPPの確定診断や遺伝カウンセリングのためにALPL遺伝子検査を実施することを推奨する。ALPL遺伝子検査による重症度判定の正確性には限界がある。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】常染色体潜性遺伝性HPP家系に対する遺伝カウンセリングにおいて、責任バリアントのヘテロ接合体である親や同胞は保因者であり、通常は無症状で治療を要しないことを説明することを提案する。HPPに合致する症状を有するにもかかわらず、ドミナントネガティブ作用が証明されていない病的バリアントが片アレルにのみ同定された患者に対する酵素補充療法の適否については、HPPの診療経験が豊富な専門家に相談することを提案する。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】HPPに罹患していることが確実で、かつ、周産期重症型や乳児型のように予後不良であることが予測される場合はALP酵素補充療法の適応となり、実施することを推奨する。また、生命予後良好な病型であっても、骨症状や筋力低下など、HPPに基づく症状により運動機能やQOLが損なわれている場合、ALP酵素補充療法による改善が期待できる。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】遺伝学的評価は、ALP酵素補充療法の適応となる予後不良であることが予測されるHPPの診断確定には推奨される。一方、重症度によりALP酵素補充療法適応が考慮される生命予後良好な病型においては、遺伝学的評価による重症度判定の正確性には限界がある。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:8.0 (8–9)
【推奨】HPPに対するALP酵素補充療法の効果は、患者のライフステージや重症度に応じ、多診療科連携による集学的な臨床症状の評価と骨X線検査所見や生化学検査所見、QOLの評価に基づいて判定することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPPに対するALP酵素補充療法中には、有効性と安全性をモニターするため、年齢や症状に応じて、生化学検査、骨X線検査、呼吸機能評価、成長の評価、痛みや運動機能の評価、QOLの評価、歯科的評価、異所性石灰化の有無の評価などを定期的に行うことが推奨される。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】予後不良であることが予測される周産期重症型、乳児型に対しては、ALP酵素補充療法を行うことにより生命予後改善が充分に期待でき、推奨される。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】周産期良性型HPPに対するALP酵素補充療法の有効性については、骨症状や運動機能の低下がみられる場合に、有効性を評価しながら実施することを提案する。ただし、軽症例は経過観察でよい。今後も症例の蓄積と解析が必要である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】小児型HPPに対するALP酵素補充療法は、周産期型、乳児型と同様に骨X線所見の改善が認められ、運動機能の向上が得られることから提案される。ただし、軽症例は経過観察でよい。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (8–9)
【推奨】成人型HPPに対するALP酵素補充療法については、骨症状や運動機能を改善させる可能性があるが、現時点ではエビデンスがほとんどない。今後、症例の蓄積と解析が必要である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】歯限局型 HPPに対するALP酵素補充療法については現時点ではエビデンスがほとんどない。今後、症例の蓄積と解析が必要である
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】現時点では、ALP酵素補充療法のHPPの頭蓋縫合早期癒合症に対する効果は不明であり、今後の検討課題である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】ALP酵素補充療法は、乳児期~小児期発症のHPPにおける運動機能の改善のために推奨される。一方、成人型HPPの運動機能に対するALP酵素補充療法の効果は不明であり、今後の症例の蓄積が必要である。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:条件付き推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】成人患者のHPPに起因する骨折、不全骨折、偽骨折に対し、ALP酵素補充療法を提案する。また、HPP成人患者では骨癒合が遅延しやすいため、骨切り術や骨接合術後にもALP酵素補充療法を実施することを提案する。小児患者の骨折に対する有用性は現在のところ不明である。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】ALP酵素補充療法は、HPP小児患者の運動発達遅延や認知発達遅延などの神経症状を改善することが期待され、推奨される。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPP患者の痛みについては、原因の検索を行い、骨折や偽骨折などの骨石灰化障害症状に伴う骨痛と考えられた場合にALP酵素補充療法を行うことを提案する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPPのピロリン酸カルシウム結晶沈着症や異所性石灰化に対するALP酵素補充療法の有効性については、現時点ではエビデンスがなく、今後、症例の蓄積と解析が必要である。従って、HPPのこれらの症状の改善を目的としたALP酵素補充療法については、実施しないことを提案する。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】HPPの歯科症状の改善のためのALP酵素補充療法についてのエビデンスはほとんどない。今後、症例の蓄積と解析が必要である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:8.5 (7–9)
【推奨】HPP成人患者では骨折や骨切り手術後の骨癒合が遷延しやすいため、それらの手術を行う際にはALP酵素補充療法を実施することを提案する。一方、内反足や脚長差、四肢の変形などに対する小児期の整形外科手術では、ALP酵素補充療法の有用性を示すデータは現在のところない。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:推奨なし、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPPに対して歯科矯正やインプラント治療を行う際、ALP酵素補充療法の併用についてのエビデンスはほとんどない。今後、症例の蓄積と解析が必要である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】添付文書に基づき、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみALP酵素補充薬を投与することを推奨する。また、授乳婦に対しては、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】周産期重症型や乳児型のHPPの場合、生命予後を改善するために、可及的早期にALP酵素補充療法を開始することを推奨する。呼吸機能が改善するまでには時間がかかり、その間、集中治療を要する場合もあるため、可及的早期に酵素補充を開始することを推奨する。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】ALP酵素補充薬の減量や中断が治療効果に及ぼす影響は、現時点でエビデンスに乏しく不明である。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】ALP酵素補充薬の投与量や投与回数の設定に関する検討は現時点ではほとんど無く、その根拠とするエビデンスに乏しい。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:推奨なし、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】ALP酵素補充薬アスホターゼアルファの投与により、注射部位反応が発現することがあるため、同一部位への反復注射を避け、注射部位を毎回変更することを推奨する。また、血清カルシウム値やリン値が変動することがあるため、モニタリングを行うことを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】ALP酵素補充薬の投与後にアナフィラキシーのような過敏反応を呈した場合、直ちに中止し適切な処置をすることが推奨される。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】HPP ではビスホスホネート薬による骨症状の改善は望めない一方、非定型大腿骨骨折のリスクをさらに高めることが危惧される。したがって、ビスホスホネート薬を投与しないことが推奨される。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】骨密度低下を示すHPP成人患者のうち、HPPであることを除けば骨粗鬆症の診断基準を満たし、骨折あるいは骨折治癒の遷延を認める場合には、骨形成促進薬として遺伝子組み換えテリパラチドもしくはロモソズマブの投与を提案する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:条件付き推奨、同意度:8.0 (6–9)
【推奨】HPP ではデノスマブによる骨症状の改善は望めず、骨折抑制効果も検討されていない。むしろ非定型大腿骨骨折のリスクを高める可能性もあるが、検討成績はない。したがって、骨密度低下を示すHPP成人患者に対してデノスマブを投与しないことを提案する。
エビデンスの確実性:D、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】低カルシウム血症を認めない限り、HPP成人患者に対して活性型ビタミンD誘導体は投与しないことが推奨される。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】HPP におけるけいれんは通常ビタミン B6 依存性けいれんであり、ピリドキシン投与による治療が行われる。特に新生児では呼吸障害などに伴う急性症候性のけいれんや不応例も存在するため、HPPにおけるけいれん治療においては、ビタミンB6依存性けいれんの診断的治療として脳波記録またはamplitude-integrated EEG等での記録を行いながらピリドキシン投与を行うことを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】ビタミンB6依存性けいれんを発症したHPP患者では、酵素補充療法を開始したのちにはビタミンB6投与を1か月程度で漸減中止することを提案する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】酵素補充療法はHPPにおける高カルシウム血症の根本的な治療であり、推奨される。高カルシウム血症に対する一時的な対症療法として、低カルシウムミルクの使用などのカルシウム摂取制限、輸液、ループ利尿薬、カルシトニンの投与などが行われる場合があるが、これらは骨症状を悪化させる可能性があるため、酵素補充療法を実施することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:8.0 (7–9)
【推奨】HPPにおいては歯科的な経過観察や治療を実施することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】歯限局型HPP患者も、歯の異常以外のHPPの症状の出現について、長期間にわたる経過観察を行うことが推奨される。
エビデンスの確実性:B、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】変形矯正手術を行う場合は成長期にguided growthを実施することを提案する。骨切り手術を行う場合は、骨の強度は高くないためプレートよりも髄内釘による固定を提案する。脚長不等に対しては成長期に骨端線抑制手術を実施することを提案する。骨延長手術を行う場合は、骨形成が良好ではないことに注意する。変形や脚長不等に対する治療のエビデンスは乏しいため、HPPを熟知した整形外科医と相談して治療方法を選択することを提案する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】小児HPP患者では運動発達遅滞や筋力低下などに対して運動療法を提案する。しかしながら運動療法を含めたリハビリテーション治療の有用性を示したデータはない。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:弱い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】HPP罹患妊婦の妊娠・分娩管理においては胎児への遺伝性について検討することを推奨する。また、妊娠中は骨代謝に変化が生じるため骨折等に注意することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
【推奨】周産期重症型HPPでは、急性期には胸郭形成不全(狭胸郭)に伴う低い肺コンプライアンスや高い気道抵抗を特徴とした重症呼吸不全やビタミンB6依存性けいれんが生命予後に影響する。出生後すぐから高頻度換気療法や一酸化窒素吸入療法を要する例もあり、集中管理に精通した医師(新生児科医・小児集中治療医など)により人工呼吸などの呼吸管理や肺高血圧症、およびけいれんの治療ができる施設で管理を行うことを推奨する。
エビデンスの確実性:A、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (8–9)
【推奨】HPP患者のトランジションにおいては、患者の理解力や判断力の成熟度を考慮したタイムラインを設定し、患者や保護者への疾病教育、患者の自己管理や自立の奨励、遺伝カウンセリングなどを段階的に実施することを推奨する。HPP患者の移行期医療においては、必要な情報を記載した紹介状やチェックリストを作成し、小児科医と成人診療科医の連携によるシームレスな医療の提供と、多診療科/多職種による集学的管理の継続を実施することを推奨する。
エビデンスの確実性:C、推奨の強さ:強い推奨、同意度:9.0 (7–9)
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HPPモニタリングガイダンス
診療ガイドラインのCQ9-1「ALP酵素補充療法中のモニター項目には何が推奨されるか」に対する推奨の作成にあたっては、Kishnaniらによる論文 (Kishnani PS, et al. Mol Genet Metab, 2017: 122: 4-17) を参考にしました。この論文で提案されているモニタリングガイダンスは、酵素補充治療中の患者を対象としていますが、酵素補充を行っていない患者の管理においても参考になります。しかしながら、必ずしも日本の現状に合わない記載も見られます。そこで、HPPの診療経験を有する日本のエキスパートが参集し、このモニタリングガイダンスを日本で活用するための改変・追加・削除を行って、その結果をまとめました。PDFを以下からご参照いただけます。
→ HPPモニタリングガイダンス日本版はこちら